約 5,000,156 件
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1274.html
468 :とねかむ11話「Our Love And Peace前編」 [sage] :2009/06/22(月) 19 18 40 ID X/iPN+ym うなされて飛び起きるという、史上最悪の日曜の朝を迎えた。 蒸し風呂のような部屋の暑さに苦しんだわけではなく、部活の開始時間から大幅に遅れて目覚めたことも、原因ではない。 昨晩、さんざん俺を苦しめた悩みは、さも当り前のように夢にまで顔を出した。挙句、最悪なアレンジを加えてくれるというサービスっぷりだ。 これはもう、鳴ってもいない目覚し時計を床に叩きつけるほどの喜びである。 やたらと後を引く眠気を引き摺って、部屋を出た。階段に向かう途中、くるみの部屋の扉が少し開いていることに気付いた。 元は姉の部屋だったのだが、引っ越してからも頻繁に帰ってくる彼女のため、部屋の中はそれなりに整っていた。奥の壁に押入れがあるお陰で収納には困らず、タンス等の後付の収納具は一切ない。 淡い桃色の壁紙の張られた壁が大きく広がっており、そのせいか、二割り増し程度に広く感じる。 綺麗に畳まれた布団の上に、丁寧に畳まれた寝巻きが置いてあった。その脇に、三角形に近い形をした、白く小さな布を見つけ、慌てて扉を閉めた。 1階には和室と洋室があるが、食事をとるのは基本的に洋室なので、そちらに向かう。テーブルの上にはスクランブルエッグとキャベツとソーセージを炒めて、 海外由来の調味料で味付けされた、我が家の定番の朝食が置いてあった。今の今まで眠っていた俺が作ったはずもないので、くるみがやったのだろう。 手でソーセージを摘んだ時、書置きがあることに気付いた。度を越えた丸文字で、『ぐっすり眠っていたので起こしませんでした。少し出かけますが、遅くならないうちに帰ります。』と書いてあった。 この文体は黒崎家の血筋なのだろうか。母の字と瓜二つである。ちなみに斎藤家は達筆で、父の字は解読不能の域に達している。この二つの血筋が交わると父方が勝つようで、姉も俺も達筆な部類に入る。 さらに、姉の髪が黒いことからも、その理論は証明されている。 茶碗にご飯を盛りながら、くるみが1人で外出するということの珍しさを、ようやく実感した。よくよく考えれば、こっちに住んでからどころか、遊びに来てた頃から1人で出かけることはなかった。 ぼんやりと、叶とくるみが並んで歩く姿を想像した。身長差が激しい気もするが、これはこれでありだろう。 そう考えた直後、胸が締め付けられる。いや、胸が締め付けてきた、というのが正しいだろうか。それを押し込むように、食事をぶち込む。吐き気に近いゲップを、今度は牛乳で押し流した。 時計を見れば10時過ぎ。部活の開始が8時なので、遅刻どころの騒ぎではない。となれば、するべきことは自主休暇だ。 食器を洗い終わると、まるで計ったかのように、庭とを隔たるガラス戸にマエダが飛び掛ってきた。背中側の黒とは真反対の白い毛の生えた腹をこちらに向け、前足を戸にかけて擬似的な二足直立をしている。 その足元には全身が黒い毛で覆われたルイスが、あどけない瞳を向けて尻尾を振っていた。 「後で散歩行ってやるからな」 人差し指でガラスを突付くと、ルイスがガラス越しに指を舐めてきた。どこかこそばゆくて、指先を離す。ふと、ガラス戸の脇に置かれた小さな机にカゴに目がいく。 底の浅いバスケットのようなもので、キャンプが趣味の父が集めた、用途のよくわからない雑貨の掃き溜めとなっている。元は和室に置いてあったのだが、母に追いやられていくうちにここまで移動してしまった。 そう遠くない未来、庭に置かれることになるであろう。 なんとなしに漁ってみると、相変わらずのカオス空間だった。黄緑色のロープや謎のフック、20センチはあろうかという杭など様々なものが出てきた。 また増えたな、と呆れながら中身を戻すとき、何かが足りない気がしたが、特に気にしなかった。 立ち上がるとき、足元がふらついた。相変わらず眠気が頭を重くしていた。寝不足という感じのものではなくて、眠気というよりは、脳に鉛か何かを埋め込まれたような不快さがあった。 鏡と向き合ったとき、髪の毛がだいぶ伸びていることに、今更ながら気付いた。「まさかこれが原因ではないよな」と思わず零し、顔を洗った。 469 :とねかむ11話「Our Love And Peace前編」 [sage] :2009/06/22(月) 19 19 22 ID X/iPN+ym 「髪切りに行くかな」掃除、洗濯、晩御飯の仕込みが終わると、唐突に暇になった。だから、なんとなく呟いてみた。 この気だるさを髪の毛のせいと断定したわけではないが、なんとなく、髪を切れば変わるんじゃないかと勘ぐっていた。失恋した時に切るのと似ているなと思ったが、すぐに、それは違うだろう、と自分でつっこんだ。 途端、ルイスが吠えた。それはもう、烈火の如くといっても大袈裟ではないほどに。 なだめようが犬用の菓子をやろうが、ルイスは黙らなかった。ルイスは滅多に吠えないのが特徴で、近所では『行儀のいい犬』としてそれなりに有名だった。 そんなルイスが俺を見上げて一心に吠える姿は、警告をしているようで、非難をしているようでもある。 その姿から逃げるようにして自室へと戻り、出掛ける仕度を始める。 東京と言えば大都会。ビルが群生して、並々ならぬ量の人と車が行き交い、緑も情もない都市、そんな様子を想像するのが普通だろう。実際、そこまで間違ってはいない。 ただ、東京といってもピンからキリまでが存在し、23区から大きく離れた地域は、目も当てられない。 4階建てを越える建物は学校やデパートぐらいで、すれ違うのはおじいちゃんおばあちゃんやトラクター、緑と情なら豊富な田舎町。そんなところに、俺は住んでいる。 歩いて行ける範囲には駄菓子屋か小さいスーパーぐらいしかなく、コンビニを探そうものなら30分以上歩くことになる。とはいえ、理髪店ぐらい、田舎にもある。 あるが、バカみたいに高いうえに、どんな風に注文しようが、坊ちゃん刈りかスポーツ刈りにされてしまうのだ。訴えれば勝てるレベルである。 高校があるのは最寄駅から三駅向こうで、そこまで行くだけでも大分発展度が違う。あそこの駅前には安く、腕前もそれなりの、行きつけの美容室がある。 部活をサボって学校の周りをうろつくのはよろしい事とは言えないが、まぁ構わないだろう。 私服に着替えて再び居間へと降りると、変わらずルイスが吠えていた。 「すぐ戻るから」 もういい加減に効果はないと分かったが、一応声をかけた。やはり、効果はなかった。 のそのそと、ボリュームのある毛が何かに擦れる音が、ガラス戸の向こうからした。マエダが小屋から出てきたのだ。 元々は北極だか南極に生息している犬種なので、夏場であろうと、マエダはかなりの量の毛を有している。 その毛皮の奥の瞳が、ジッと俺を見つめてきた。いいのか、と問われた気がした。俺は慌てて家から逃げ出す。 玄関を抜けて外へ出ると、容赦ない日差しに顔が歪んだ。それでも、何故かそれほど暑くは感じなかった。ヘッドフォンから、『ユー・ダイド・イン・ザ・シー』という曲が流れてきた。 『あなたは海の中で死にました』。きっと、手足も動かせないほどの深海で、俺は死んだに違いない。駅へと向かって、やけに重い脚を踏み出す。頭の中で、鉛が、カランといい音を響かせた気がした。 470 :とねかむ11話「Our Love And Peace前編」 [sage] :2009/06/22(月) 19 21 07 ID X/iPN+ym お兄ちゃんのいない通学路は、なんのおもしろみもない。 ベタつく湿気に、新緑の木々、立ち昇る焼けたコンクリートの匂いも、何もかもが味気なく感じる。もしかしたら、お兄ちゃんといる普段が満ち足りすぎているのかもしれない。 そんな無味乾燥の道を歩いて学校に到着した。休日だというのに思いのほか人が多く、この学校の部活が盛んだという事を改めて認識させられた。その中を、少しも足を止めずに体育館へと向かう。 途中、数人の友人を見かけた気がするが無視した。 ロールケーキみたいな体育館の入り口、右手にダンボールが積み重ねられた渡り廊下に立っていた。中から大きな声といくつもの足音、そして篭った熱気が感じられた。 立っているだけでも汗が吹き出る暑さだというのに、好き好んで運動をするなんて、なんと殊勝な心がけだろう。 昨日、熱中症で倒れてしまったお兄ちゃんにゆっくり休んでもらうためにも、これから私がすることをお兄ちゃんに見られないためにも、 私が医者から処方されている睡眠導入剤を、こっそりとお兄ちゃんの飲み物に混ぜてあげた。 早くても昼過ぎまでは眠れるだろう。 お兄ちゃんに関して問題はない。問題があるのは私のほうで、どうやって敵を捜し出すかだ。 “部活のときに話した”と言うからには、同じバレー部の人である可能性が高い。『あいつ』が私のことを好きだとも言っていたので、まず男とみて間違いない。そして、『キョウト』。 まさか、『京都』や『教徒』なわけはないだろう。それだと文章にならない。文脈から推測すれば『キョウ』と『ト』で分けて、『ト』は接続詞、つまり、敵の名前は“キョウ”。 「キョウ・・・」 一晩中、頭を抱えても答えは出なかった。お兄ちゃんの中ではどうも、私がその人のことを好きだということになっているらしい。なにがどうなってそこに行き着いてしまったのだろう。 “昔からそばにいる人”で“東京の人”と言ったら、斎藤憲輔以外にいないというのに。 とにかく、まずは状況を知る必要がある。誰かがお兄ちゃんを唆しているのならば、止めさせなくてはいけない。窪塚りおが一枚噛んでいるのならば、ここで一度ハッキリさせるべきだ。 絶対にお兄ちゃんを渡すつもりはない、と。 「あれ、くるみちゃん?」意を決して体育館に踏み込もうとした時、背後から呼びかけられた。 校舎の方へと振り向くとそこには、膝上までのショートパンツに、胸元に大きく『排球』と書かれたTシャツ姿の男子が立っていた。顔と髪がびっしょり濡れている。 汗だとは思えないほど濡れているので、校舎の中の水道で水を被ってきたのだろう。確か、お兄ちゃんの友達の、さ・・・とう?だった気がする。田中だったような気がしなくもない。 「こんにちは、先輩」とりあえず、先輩であることに間違いはない。先輩は、こんち、と挨拶だか呪文だか分からない返事を返してきた。 「くるみちゃんがいるってことは」 「おに・・・兄は来てませんよ。体調を崩して寝込んでます」 「倒れたのに無理するから、ったく」 頭を掻きながら、ぞんざいに言う先輩が頭にきたが、堪える。ここで時間をくうわけにはいかない。 「あいつ、くるみちゃんの言うことは素直に聞くからなぁ。いっそ、マネージャーやんない?」 「先輩」背中にぞわりと悪寒が走る。この声はいくら聞いても慣れないと思う。 先輩の後ろから、窪塚りおが、降って湧いたかのように現れた。比喩などではなく、本当に突然。 「片付け、まだ残ってますよ」窪塚りおは笑顔で、手に持った雑巾を掲げた。 「ああ、うん。すぐ行くよ」 私にとっては嫌悪と恐怖の象徴でしかない声だが、男の人には甘美なものらしく、大抵の人はこの先輩のようにヘラヘラと、厭らしい笑みを浮かべる。 こうやって他人を魅了する力は、私には無く、そして一生涯得ることの出来ないものだと思う。 だからといって、悔しいなんて思うことはない。私に多くはいらない。お兄ちゃんだけ、お兄ちゃんだけでいい。 優しげに笑う彼女だが、先輩に表情が見えない位置まで来た途端、研ぎたての刃物のように尖った敵意を私へと向けてくる。目を逸らして、服の上からチョーカーを握り締めた。 471 :とねかむ11話「Our Love And Peace前編」 [sage] :2009/06/22(月) 19 21 51 ID X/iPN+ym 「つーわけで、俺もそろそろ・・・大丈夫?」 我に返って、目の前にある顔に驚いた。慌てて後退りしたところ、背中が何かにぶつかり、そのまま倒れこんでしまった。バタバタと大きい音が響いた。 続いて、鈍い痛みがじんわりと広がる。 「あぅ・・・」 「ちょ、大丈夫?」 「だ、だいじょぶです」まだ少しだけ目が回っていたが、なにより優先して確認するべきことがあった。 幸い、スカートが捲れたりはしていなかった。それどころか、いくつもの箱が覆い隠してくれていた。どうやら、ダンボールの山に突っ込んでしまったみたいだ。 先輩がダンボールをどかしてくれたので、なんとか身体を起こせた。左手に持った鞄のファスナーが閉まってるのを確認して、胸を撫で下ろす。 「立てる?」 「だいじょぶ、大丈夫です」 差し伸べられた手を取らずに立ち上がった。足場が安定せず、少しよろめいた。 そこで、唐突に思いつく。もしかしたらこの人が『キョウ』かもしれない。こうやって善人ぶる人種こそ裏が恐いのは、窪塚りおで十分すぎるほどに知っていた。 「とりあえず、片付けは後回しだなぁ」私が警戒しだしたことに気付かないのか、変わらぬ口調で彼は言う。「まずはこっちだな」 「あ・・・」 目線を追って、ようやく、足元に散乱した箱に気付いた。ダンボールよりかはずっと小さく、ボール一個分くらいかな、と思った時、箱の表にバレーボールが描かれているのが目に止まった。 どうやら新品のボールみたいだ。 「ごめんなさい、私がやります」 「いや、いいよ、俺やっとくから」 警戒しつつ、しゃがみこんで箱を片付ける。次になんと言って探りを入れるべきかと思案していると、後ろ側から、体育館の扉が開く音がした。 「うっわ、外も暑いな」 最初に感じたのは不快感。窪塚りおとは違い、隠したり、取り繕おうという気が感じられない。お兄ちゃんとは違い、冷たく、蔑むような声だ。 「お、丁度いい。手伝え」先輩が腰を上げて、話しかけた。私は振り返らず、効率よく探る方法だけを考える。 「嫌だね、なんで俺が」 「んなこと言うなよ~」 「てめぇの尻ぐらいてめぇで拭けよな」 足音と同時に、男の声、気配が移動していき、後姿が視界に入る。 「俺、現代の若者です」と主張するかのような、ワックスで固めたよく見る髪形で、背の高さと相俟って、若々しさを増長している様に見えた。どこか生意気にも思える。 ただ、今の私にとって、そんなものは微塵も関係ない。彼の背中、首の下辺りから目が離れなかった。 「あのっ」気付けば、立ち上がり、声を掛けていた。 男は片手で髪型を気にしながら、気だるそうに振り向いた。しかし、目が合うと、少しだけ表情が柔らかくなったように思えた。「ああ、くるみちゃん」 お兄ちゃんが呼ぶからか、苗字が言い慣れないからか。こちらに引っ越してきてから、下の名前で呼ばれることが多くなった。お兄ちゃん以外に呼ばれるのは、不快を通り越して苦痛だ。 「あの、この後、お時間ありますか?」 「時間?」 「お話がしたいんです」少し迷ってから、二人っきりで、と付け足した。「ダメですか?」 「ダメなわけがない。むしろ、こっちからお願いしたいぐらいだよ」 校門前で待ってますね、と言うと、彼は笑顔を見せ、校舎へと消えていった。 これでいい。一番の難関だと思っていたが、まさかこんなに上手くいくとは思ってなかった。あと少し、あと少しだ。そう言い聞かせて、鼓舞する。 箱を片付ける作業に戻ろうとすると、先輩が話しかけてきた。「いいの?」 「いいもなにも、私から誘ったんですよ」 「いや、そうだけどさ」 「あの人じゃなきゃダメなんです」 「ダメねぇ」 先輩が校舎の方へと目を向けたので、身体で隠しながら、鞄を開けた。陰なので中身は見づらいが、手で探ると、すぐに見つかった。レザーケースに入れられた、刃渡り20cmほどのナイフが。 これで、あの男を、『Kyo』を刺す。私の頭の中には先ほどの後姿、ユニフォームの首下に書かれた『Kyo』という文字がハッキリと写し出されていた。 鞄の中で握り締めた木製の柄は、ひんやりとしている。 「喧嘩でもした?」先輩がポツリと、思わず出てしまったかのような声で訊いてきた。言葉が足りない気がしたが、むしろ、わざと言っていないようにも思える。 「私とお兄ちゃんは喧嘩なんかしませんよ」 笑顔で答えると、先輩は余計にまいったような表情になり、「悪い、良くない、Bad、Badly」と呪文のように呟いた。 472 :とねかむ11話「Our Love And Peace前編」 [sage] :2009/06/22(月) 19 22 39 ID X/iPN+ym 『散切り』という、なんとなく嫌な名前の美容室から出た時、遊佐とかちあわせになり、『偶然がいくつも積み重なることで必然や、奇跡がうまれる』という一節を思い出した。 だからといって、この出会いが必然や奇跡だとは思いたくない。 「あれ、憲輔じゃん」 「遊佐かよ」 「『かよ』ってなに、ねぇ、『かよ』って」 たまたま靴紐がほどけて、それを結んでいたのがたまたまこの美容室の前で、たまたま俺が出てきた。さらに言えば、遊佐がこの道を使ったのも、俺が『散切り』へ来たのもたまたまだ。 確かに偶然が積み重なっているが、俺は頭の中で否定し続けた。 「なに、その顔」 「俺はもとからこんなだ」 「あんた、その顔なら鳩ぐらいは殺せるわよ」 「今度試してみるよ」 「時間はもっと有意義に使いなさいよ」 やれやれ、と大袈裟なアクションをする遊佐は、もはやトレードマークとなったいつもの髪形に、よくわからない英字のプリントされたTシャツを着て、下は膝上までのジーンズを履いていた。 なんとうか、非常に色気がない。Tシャツを大きく膨らませている胸のお陰でギリギリ及第点と言ったところか。 「どこ見てんのよ、エロガッパ」 「なんだよ、エロガッパって」 「エロっていったらカッパでしょう」 「今まさに、千を越える河童が多摩川を上り始めたぞ」 「この暑さじゃ皿が乾くわよ」 何かある度に、遊佐は河童を馬鹿にする。というよりは、俺が住んでる市が河童を大プッシュしているのを馬鹿にする。それ自体は一向に構わない。 俺だって、どうかと思う。ただ、遊佐はそれを使って俺をからかうのだから、手に負えない。 「もういい、帰る」頭の鉛がだいぶ軽くなり、ほどよくテンションも上がってきたのだが、遊佐と漫才が出来るほど元気ではなかった。 悪かったって、と俺の手を掴む遊佐のは声は小刻みに震えており、息を殺しながら笑っているのがバレバレだった。「怒んないでってば、カッパはいるわよ、寿司屋とかに」 などとくだらないことを言って、自分で笑い出す始末である。 「帰る、帰って河童と遊ぶんだ」 「なに、バカなこと言ってんの?」と笑う彼女に、思わず必要以上のため息が出てしまった。 「いいかげん機嫌なおしなさいよ~」この店だけで6着目の服を手に取りながら、遊佐は言ってきた。 「お前は態度ってものを学ぶべきだな」 「どう?これ可愛くない?」スポンジだかチーズだかわからないキャラクターの書かれたTシャツをヒラヒラと揺らしながら、悪びれもせずに訊いてきた。 半ば引き摺られるようにして駅前の商店街まで来た。 よくあるような、片っ端からシャッターが閉まっていたり、需要があるとは思えないような色合いの服が並んでいるものではなく、最近改修したばかりで、有名ブランド店も出店している、屋根までついた最新の商店街だ。 ちなみに、看板に商店街と書いてあるにもかかわらず、地元民は『モール』と呼んで都会ぶっている。 今日はいつにも増して混んでいた。遊佐が言うには、とあるアイドルがこの地域の出身で、ここのCDショップでサイン会を開くらしい。 「いいんじゃないか」今日だけで何度この言葉を口にしただろうか。 「テキトーすぎでしょ」 「いいんじゃないでしょうか。デザインも今風だし、着やすいようにも思えますね。ただ、黄色っていうのは少々派手で、組み合わせが難しいんじゃないでしょうか」 「ん~、60点」 さすがに嫌気が差し、やけっぱちになる。「杏が着るなら、なんでも似合うと思うな、僕は」 「ビミョー」目を細めているものの、少しだけ頬が赤くも見える。面白いのでしばらく見ていると、案の定、「エロガッパ」と言ってきた。 それからまた別の店へ移動し、さらに2軒目で、空色のワンピースを手に取った時、遊佐は思い出したように口にした。「そういやさ、今日って部活じゃないの?」 「休んだよ」ワンピースを眺めていた目線を俺へと移すと、目を見開き、「珍しい」と言ってきた。 「この前も休んだし、どうかしたの?」 「別に」 「こういう時、言葉が短くなるのよね」 「そんなこと」勢いに任せて出たが、そこで少し考え込んだ。「確かに」 「憲輔のそういうとこっていいよね」やけに真面目な顔つきで言うので「珍しい」と言ってみた。 遊佐は、あはは、と笑いながらワンピースを元のところへ戻す。 「場所変えよ」 返事を聞かずに、遊佐は店の出口へと向かった。後について、俺も店を出る。結局、14軒回って、遊佐は何も買わなかった。
https://w.atwiki.jp/happyandenjoy/pages/10.html
コメントプラグイン @wikiのwikiモードでは #comment() と入力することでコメントフォームを簡単に作成することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_60_ja.html たとえば、#comment() と入力すると以下のように表示されます。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/happyandenjoy/pages/3.html
更新履歴 取得中です。
https://w.atwiki.jp/peacehp2/pages/10.html
関連ブログ @wikiのwikiモードでは #bf(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するブログ一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_161_ja.html たとえば、#bf(ゲーム)と入力すると以下のように表示されます。 #bf
https://w.atwiki.jp/peacehp2/pages/5.html
まとめサイト作成支援ツールについて @wikiにはまとめサイト作成を支援するツールがあります。 また、 #matome_list と入力することで、注目の掲示板が一覧表示されます。 利用例)#matome_listと入力すると下記のように表示されます #matome_list
https://w.atwiki.jp/peacehp2/pages/3.html
更新履歴 取得中です。 ここを編集
https://w.atwiki.jp/happyandenjoy/pages/6.html
アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/25_171_ja.html たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
https://w.atwiki.jp/peacewalker/pages/13.html
回復アイテム系 MEDICAL KIT(S) MEDICAL KIT(L) RATION(S) RATION(L) 補助アイテム系 PENTAZEMIN BINOCULARS THERM G NVG MINE D BODY ARMOR C BOX STEALTH 重要アイテム系 KEY A KEY B KEY C KEY D KEY E SECRET DOC BLUEPRINTS 弾薬系 AMMO(9MM T) AMMO(9MM) AMMO(.32ACP) AMMO(.45LC) AMMO(.45ACP) AMMO(5.56MM) AMMO(7.62x39MM) AMMO(7.62MM T) AMMO(7.62MMx54R) AMMO(12GAUGE) AMMO(HEAT) その他(注1) BANDANA ケロタン ガーコ マイクロフィルム カモフラージュ マップ MK22SPR XM177SPR MAC10SPR
https://w.atwiki.jp/redfac/pages/29.html
ストーリーの翻訳>2.INDUSTRIAL REVOLUTION ブリーフィング INDUSTRIAL REVOLUTION ブリーフィング THE EDF HAS CONFISCATED EVERY WALKER IN DUST.THE MINERS HAVE TURNED TO US FOR HELP,SO WE RE GONNA GET THOSE WALKERS BACK.HERE S YOUR OBJECTIVE, MASON.BREAK INTO THIS SITE, STEAL THE WALKER, AND GET IT TO OUR TRUCK.DON T LET THE MINERS DOWN.WITH THEIR SUPPORT, WE CAN LIBERATE THIS SECTOR. EDFは、DUST地区にあった全てのWALKERを押収した。鉱夫たちは我々に助けを求めてきた。このWALKERを取り戻すのが今回の作戦だ。お前がするべきことはこれだ、MASON。ここの場所に侵入し、WALKERを奪取後、我々のトラックまで持ってきて欲しい。鉱夫達をがっかりさせるなよ。彼らの助けがあって初めて、我々はこの地区を解放できるのだからな。 INDUSTRIAL REVOLUTION KEPLER:MASON, CHECK YOUR MAP. WHILE YOU GET THE WALKER, I LL BRING THE TRUCK AROUND. MASON, マップを確認しろ。お前がWALKERを奪取しに言っている間に、トラックを持ってくるからな。 (銃撃戦中に) KEPLER:ARE YOU THERE YET? まだ着かないのか? MASON:KIND OF BUSY HERE. 今忙しいんだ! (WALER奪取後) MASON:GOT THE WALKER. WHERE ARE YOU? WALKERを入手した。どこにいる? KEPLER:TRANSMITTING COOADINATES NOW. CHECK YOUR MAP. 今、座標を送っている。マップを見てくれ。 KEPLER:LET S GO! WE NEED THAT WALKER! 行くぞ! そのWALKERが必要なんだからな! KEPLER:THERE YOU ARE. NOW LOAD THAT THING ON THE BACK OF MY TRUCK. 来たな。さぁ、そいつをトラックの荷台に乗せるんだ。 KEPLER:WE RE MEETING UP WITH SOME FRIENDS DOWN THE ROAD. HOLD OFF THE ENEMY TILL WE GET THERE. この先で、仲間と合流する。着くまで、敵を喰い止めてくれ。 KEPLER:KEEP IT COMING! 撃ち続けろ! KEPLER:HELL, MASON! WHAT S GOING ON BACK THERE! おい、MASON! 後ろは大丈夫なのか!? MASON:DON T WORRY ABOUT ME. YOU JUST DRIVE. 俺なら大丈夫だ。運転に集中しろ。 KEPLER:DAMN, THEY RE RIPPING US A NEW ONE! クソッ、連中奪い返すつもりだ! KEPLER:DIDN T YOUR MAMA TEACH YOU HOW TO SHOOT! お前のママは、銃の撃ち方を教えてくれなかったのか!? MASON:LEAVE MY MAMA OUT OF THIS. ママはほっといてくれ。 KEPLER:RIGHT WHERE IT COUNTS! 命中だ! RED9:RED7, THIS IS RED9. YOU GOT THE WALKER? RED7, こちらRED9。WALKERは入手できた? KEPLER:YUP. AND WE BROUGHT SOME FRIENDS ALONG. ああ、ついでに愉快なお友達も一緒だ。 RED9:SORRY, YOUR FRIENDS CAN T COME. WE RE BLOWING THE BRIDGE. それは残念ね、お友達はご一緒できないわ。橋を爆破するもの。 KEPLER:YOU MIND WAITHING TILL WE GET ACROSS? 今にも落としたくて、ウズウズしてるんじゃないか?俺達が渡り終えるまで、ちゃんと待っててくれよ? KEPLER:THAT ALL YOU GOT? (笑い声)ホラ、かかってこいよ! (橋を爆破後) KEPLER:NICE WORK, MASON! WE VE GOT A FINE PIECE OF HARDWARE NOW. 良くやった、MASON! 上等のブツが手に入ったぞ。
https://w.atwiki.jp/ranoberowa/pages/383.html
第323話:Tightrope Walkers 作:◆l8jfhXC/BA 「酒で酔わせてその隙に毒を盛り、刺殺……ひどいわね」 「真正面から殺すよりも、信頼させてから隙をついて殺す方が確実だ。生き残る方法としてはいい手段なんだろうな」 「……こちらを睨みながらで言われると、まるで私に対して言ってるように思えてしまうんだけど」 「どうだろうな」 言って、ゼルガディスは居酒屋の中を調べ始めた。……こちらへの警戒を忘れずに。 学校の周囲を調べ終った後。 クエロとゼルガディスは、地図には書いていなかった南の商店街を見つけ、居酒屋の中でこの少年の死体を発見していた。 彼の不信感は、学校にいたときよりも露骨になっていた。 (仕掛けてくるとしたらこの辺りね。さすがにいきなり斬る、なんて馬鹿な真似はしないでしょうけど) 剣と魔法。 彼はこちらに対して圧倒的な力の差がある。別行動した途端に、自分が死体になるのは怪しすぎる。 (にしても……クリーオウといい、ここにはきちんと参加者へのカモも用意されてるのね) 死体に再び目を移す。こんなところで酒を飲む奴だ。ただの馬鹿か“一般人”なのだろう。 つまり、人を疑う事を知らない平和主義者。こんな遊戯に巻き込まれることなど想像もしない、ごく普通の日常に生きている者達。 単純な殺し合いの他にも、参加者同士の血生臭い葛藤も主催者は望んでいるようだ。 (その嗜好には虫酸が走るけど、駒じゃ指し手は倒せない。……例外が起こらなければ、ね) 学校で結成された、反乱軍とも言える七人の同盟。 こんな短期間に、これだけの有能な人物が集まることができたのは本当に僥倖だった。 彼らといれば脱出できる可能性も十分にある。あるいは主催者を殺すことも。 もちろん、その可能性が薄くなれば、あっさり“乗る”側に回るのだが。 (このまま脱出側になる場合、心残りなのはあの二人) ガユスとギギナ。脱出を考える場合、彼らには同盟の誰とも会わずに死体になってくれるのが一番いい。……だが。 (やっぱり、そう簡単には死んで欲しくないわね。できれば、私の手で苦しめて……潰す) 彼らが苦しむことなく殺されてしまうことなど許されない。放送で名前が呼ばれるだけの死などいらない。 ──学校に集合したときに、彼らのことは話すべきだろう。強大な敵として。 (もし会ってしまった場合、ギギナは有無を言わずに戦いを求めるだろうからいいのだけど……問題はガユスね) あいつのことだ。こちらと同じように、誰かと協力して脱出を企図しているだろう。 彼と出会ってしまえば瞬時に自分の思惑が露見される。そうなるとかなりややこしいことになる。 (どちらにしろ……こいつは邪魔ね) 脱出するにしろ殺す側に回るにしろ、ゼルガディスは障害でしかない。ここまで疑われていては信頼を取り戻すことは不可能だ。 他の五人からはきちんと信頼を得て、保持していかなければならない。 そして、最終的には隙をついて彼を殺す。 ──と、ゼルガディスが調査を終えてこちらを向いた。 「特に何もない」 「そう。この人の支給品も持って行かれてしまったみたいね。まだ時間に余裕があるから、北東の方の商店街に行きましょう」 「──待て」 刹那、ゼルガディスが剣を抜き、白の切っ先をこちらの首に向ける。 予想していたことなので特に抗わず、クエロはそのまま彼を不快感と不安の混じらせた目で見つめた。 「……何のつもり?」 「聞きたいことがある」 「尋問ってわけね。……受けてあげるわ」 「では聞こう。何故弾丸のことを隠す?」 「隠してなんかいないけど? 私は本当にこの弾丸のことを知らない」 「どうだろうな。……無作為に渡される武器は、他の参加者の持ち物から選び出されている可能性がある。 この光の剣。せつらのせんべい。サラの“知り合い”。七人中三人という確率で決めるのは早計だが── わざわざ百人以上の武器をどこかから調達してくるよりは、参加者から奪ったものを渡した方が効率がよいと考えれば理由がつく。 そして、何らかの条件で選び出された参加者達。彼らの所持品は、他人に取っては不可解で特殊なものの可能性が高い。 普通の剣や銃器が支給される確率の方が低いのではないか? せつらの拳銃と、今お前が持っているナイフも、何らかの効果があるのかもしれない。 ──その弾丸の本来の持ち主がお前である可能性も十分にある」 やはり彼は賢しい。これで信頼さえあれば、脱出の駒として申し分ないほどの人材なのだが。 「推論と結論が飛躍しすぎじゃない? 推理自体には私も同意できるけど。 何度も言うけど私は何も知らない。……仮説はあるけれど」 「言ってみろ」 もちろん、素直に話す気はまったくない。──余計ややこしくしてやろう。 「まず、この弾丸が私達の知らない特殊な銃器に対応するものの場合。これはあまり考えられないと思うの。 弾丸がここにあるってことは、その特殊な銃器は使えないわけでしょう? 弾丸のない銃器という、“はずれ”として支給する場合もあるだろうけど……それなら、もっと普通の銃器を選ぶはず。 主催者ならば、そんな特殊な武器があるならそれを使って存分に殺し合ってもらいたいだろうし。 弾丸だけもらった側としても、まったく使えないし意味がないから、捨てられてしまう可能性も高い。 そもそも、ここには銃器を知らない人もいるもの」 「……」 「ここからが本題。私はこの弾丸を、何らかの──たとえば脱出の手段としての“鍵”だと考えるわ。 ……ええ、もちろん普通は鍵なんてこんな形はしていない。でも、だからこそ。 不要なものとしてすぐ捨てられそうなものを“鍵”──つまり、一種の希望として支給品の中に放り込んでおく。 いかにもあの趣味の悪い主催者のやりそうなことじゃない?」 「飛躍しすぎている」 「わかっているわ。“鍵”は確かに極論だけど──私は、この弾丸を単体で効果を持つ特殊な道具と考えているの。 それこそ何らかの魔法で動く武器かもしれない。どちらにしろ、かなり特殊なものだと思うわ」 「それをなぜ、あのときに言わなかった?」 「長い仮説を唱えても、議論は進まないでしょう?」 (確かにその可能性はあるが……やはり信用できん) こちらを牽制するように微笑するクエロを見て、ゼルガディスは胸中で舌打ちした。 ──この状況なら、殺そうと思えばいつでも殺せる。だが、二人きりになった途端に彼女が死体になるのは露骨すぎる。 (この死体を殺した奴のように、こいつが手のひらを返して裏切る可能性は十分にある) そんな怪しい輩を、脱出という目標を掲げる同盟に入れておく訳にはいかない。 もちろんクエロ以外の全員のことも完全に信じたわけではないが、彼女よりはましだ。 (こいつは冷静すぎる。この状況の中で──なぜそんなにも“主催者”視点で物事を考えられる?) まるで──自らも駒であるくせに、他の駒を操る“指し手”として考えているような。 やはり底が知れない。完璧すぎる。 (ボロが出るまで待つのは長すぎる。……ならば) ……“いるにはいる”という彼女の知り合い。言い方からして、どうやら味方ではないらしい。 (そいつらとできれば接触して、情報を得たい。こいつ以上にタチが悪い相手かもしれんが……会う価値はある) 彼らと協力して、クエロを追い出すこともできるかもしれない。 (おそらく次の放送で集合したとき、そいつらのことを話すだろう。何割かは本当のことが混じっているかもしれないが……信用できるわけがない) ──クエロの言動と挙動を見極め、そしてクエロよりも早く彼らと接触する。 それが今考えられる一番の対策だった。 (リナとアメリアを探すことも重要だが……不安要素は早めになくした方がいい) そう結論づけて、剣を納める。この場は引くしかない。 クエロは一息ついて、 「二人で疑い合っていても先に進まないわ。とにかく今は、周辺の探索を進めましょう」 そう言った。──確かに、今は一挙一動を監視していくしかない。 「わかった」 (次の放送が分岐点ね。さて、どうでるかしら?) (次の放送がポイントだ。さあ、どうでる?) 綱渡りは、まだ終らない。 【E-1(遊園地前商店街)/1日目・10:00】 【七人の反抗者・周辺捜索組】 【クエロ・ラディーン】 [状態]:健康 [装備]:ナイフ [道具]:支給品一式、高位咒式弾 [思考]:C-3商店街へ。集団を形成して、出来るだけ信頼を得る。 +自分の魔杖剣を探す→後で裏切るかどうか決める(邪魔な人間は殺す) ゼルガディスを殺したい [備考]:高位咒式弾のことを隠す 【ゼルガディス・グレイワーズ】 [状態]:健康、クエロをかなり疑っている [装備]:光の剣 [道具]:支給品一式 [思考]:C-3商店街へ。リナ、アメリア、クエロの知り合いを探す クエロを排除したい。 2005/05/09 光の剣の矛盾修正 2005/07/16 改行調整、三点リーダー・ダッシュ一部削除 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第322話 第323話 第324話 第306話 時系列順 第294話 第293話 クエロ 第337話 第293話 ゼルガディス 第337話